解説・豆知識
投資信託の相続、名義変更、売却の手続き
一般的に、被相続人が保有していた投資信託を売却して換金するためには次のような手順をふむ必要があります。(相続人が自分で手続きをする場合)
1.被相続人が証券口座を開設している証券会社(または銀行その他の金融機関)へ死亡の連絡
2.相続手続きに必要な書類を収集し、証券会社へ提出(なお、相続人がその証券会社にいわゆる証券口座を開設していない場合は、相続人名義であらたに証券口座を開設する必要あり)
3.被相続人の証券口座から相続人名義の証券口座へ商品(保有している投資信託)を移管(※被相続人の口座を引き継ぐわけではないので厳密には名義変更ではありません)
4.相続人名義の口座への移管が完了したら相続人が売却したいタイミングで売却可能(保有し続けることも可能)
司法書士が遺産整理受任者としてこれらの手続きを行う場合は、司法書士がすべてを代理できるケースとできないケースがあります。これは相手方である証券会社(または金融機関)ごとに取り扱いが異なることがあるためです。それぞれの手続きは以下のとおりです。
<司法書士がすべてを代理できないケース>
司法書士がご依頼者様との間で正式に遺産整理業務委託契約を締結し、委任状にも投資信託の解約、受渡、相続移管、売却など一切の行為を記載しているにもかかわらず、上で述べたような「一般的」な取り扱い(すなわち相続人が相続人名義で証券口座を開設するところからのスタートとなる)しかできない金融機関があります。
結局、この場合は、司法書士は必要書類を収集することのほか、相続人ご本人が口座開設その他の手続きのため窓口に出向くのに付き添うことぐらいしかできず、相続人のご負担を大きく軽減することはできません。
しかも、某信用組合の取り扱いでは、必ず窓口に相続人が出向かないといけないらしく、仮にお住まいが遠方だったらとか、仮に体が不自由で出向くことができないというようなお客様だったらどうするのでしょう。投資信託は日々基準価格が変動するものですし、値下がりの不利益はどのように考えているのでしょうか。このように代理制度、遺産整理業務を真っ向から否定する金融機関もありますので注意が必要です。
<司法書士がすべてを代理できるケース>
司法書士名義で証券口座を開設し、被相続人名義の証券口座から司法書士名義の証券口座へ保有商品を移管し、ただちに売却となります。相続人が窓口へ出向く必要がなく銀行預金の解約のイメージに近いと思います。上で述べたような「相続人名義での証券口座開設」は不要となります。某大手証券会社、某銀行系列の証券会社などはこの取り扱いでした。
なお、相続人の方が売却を希望せず、保有し続けたいという場合は、一般的な原則にもどり、相続人名義で証券口座を開設し、そこへ移管してもらう必要があります。司法書士名義の証券口座では保有という概念はありえませんから当然ですね。