あべ司法書士事務所【神戸市東灘区】
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解説・豆知識

遺産整理・相続

投資信託の相続、名義変更、売却の手続き

 一般的に、被相続人が保有していた投資信託を売却して換金するためには次のような手順をふむ必要があります。(相続人が自分で手続きをする場合)

.被相続人が証券口座を開設している証券会社(または銀行その他の金融機関)へ死亡の連絡

.相続手続きに必要な書類を収集し、証券会社へ提出(なお、相続人がその証券会社にいわゆる証券口座を開設していない場合は、相続人名義であらたに証券口座を開設する必要あり)

.被相続人の証券口座から相続人名義の証券口座へ商品(保有している投資信託)を移管(※被相続人の口座を引き継ぐわけではないので厳密には名義変更ではありません)

.相続人名義の口座への移管が完了したら相続人が売却したいタイミングで売却可能(保有し続けることも可能)

 

 司法書士が遺産整理受任者としてこれらの手続きを行う場合は、司法書士がすべてを代理できるケースとできないケースがあります。これは相手方である証券会社(または金融機関)ごとに取り扱いが異なることがあるためです。それぞれの手続きは以下のとおりです。

 

<司法書士がすべてを代理できないケース>

 司法書士がご依頼者様との間で正式に遺産整理業務委託契約を締結し、委任状にも投資信託の解約、受渡、相続移管、売却など一切の行為を記載しているにもかかわらず、上で述べたような「一般的」な取り扱い(すなわち相続人が相続人名義で証券口座を開設するところからのスタートとなる)しかできない金融機関があります。

 

 結局、この場合は、司法書士は必要書類を収集することのほか、相続人ご本人が口座開設その他の手続きのため窓口に出向くのに付き添うことぐらいしかできず、相続人のご負担を大きく軽減することはできません。

 

 しかも、某信用組合の取り扱いでは、必ず窓口に相続人が出向かないといけないらしく、仮にお住まいが遠方だったらとか、仮に体が不自由で出向くことができないというようなお客様だったらどうするのでしょう。投資信託は日々基準価格が変動するものですし、値下がりの不利益はどのように考えているのでしょうか。このように代理制度、遺産整理業務を真っ向から否定する金融機関もありますので注意が必要です。

 

<司法書士がすべてを代理できるケース>

 司法書士名義で証券口座を開設し、被相続人名義の証券口座から司法書士名義の証券口座へ保有商品を移管し、ただちに売却となります。相続人が窓口へ出向く必要がなく銀行預金の解約のイメージに近いと思います。上で述べたような「相続人名義での証券口座開設」は不要となります。某大手証券会社、某銀行系列の証券会社などはこの取り扱いでした。

 

 なお、相続人の方が売却を希望せず、保有し続けたいという場合は、一般的な原則にもどり、相続人名義で証券口座を開設し、そこへ移管してもらう必要があります。司法書士名義の証券口座では保有という概念はありえませんから当然ですね。

被相続人の住所が不明の場合 相続放棄の管轄

事案の概要

A市内に存在する不動産の所有者Ⅹが死亡した。

Ⅹの相続人は父Yである。

その後Yが死亡し、その相続人はめいにあたるZである。

今回、相続放棄をしたいと考えているのはZであり、被相続人は、Xから不動産を相続した(と考えられる)Yである。

ことの発端は、ある日、Zの自宅に、A市役所から「空家等立入調査等実施通知書」と題する書面が届いた。

Zはその書面に記載されている「登記簿上の所有者」:「Ⅹ」という名前にまったく心当たりがなかったが、戸籍等を取得していくうちに、上記の親族関係が明らかとなった。

 

 

ここで、相続放棄は、「相続が開始した地を管轄する家庭裁判所」に申述しなければなりません。

管轄に関して定める家事事件手続法第3条の11、第4条を簡単にまとめると、以下のようになります。

● 被相続人の住所又は居所が日本国内にあるときはその住所地または居所を管轄する家庭裁判所

● 居所がない又は知れない場合には最後の住所地(ただし日本国内でなければならない)を管轄する家庭裁判所

 

しかし、Yの住所地を調査するも、死亡したのが10年以上前であり、戸籍の附票が廃棄されていたためYの住所に関する情報はまったく得ることができませんでした。(居所に関する情報も皆無)

そこで、家事事件手続法第7条を簡単にまとめると、

● 管轄が定まらないときは、

①審判又は調停を求める事項に係る財産の所在地 

 又は

②東京家庭裁判所

の管轄に属するとされています。

 

今回は、「相続放棄」であり、本来、「ある特定の財産」との関係を断つために審判を求めるものではありませんが、本件では、被相続人に属する財産の一部としてこの不動産が存在し、逆にこれ以外の財産の存否が不明なため、申述人の相続放棄における主目的は、この不動産に関する権利義務からの解放に尽きるとも言えます。

よって、「審判又は調停を求める事項に係る財産の所在地」を管轄する家庭裁判所に申述をし、無事、受理されました。

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2024.12.14 Saturday