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解説・豆知識

不動産登記

「委任の終了」は大変→「真正な登記名義の回復」 

【委任の終了に代えて真正な登記名義の回復】

いわゆる地縁団体の所有地について

ある土地が、その地域の住民を構成員とする権利能力なき社団の所有でしたが、当時(明治時代)はその社団に法人格がないことから、その社団名義での所有権登記が認められず、構成員である個人11名の共有として登記されていました。

 

時は流れ、その名義人たちがお亡くなりになり、その各相続人らは(その土地が実体上、社団の所有に属するものであるという事実を知らず、または知っていた人もいたかもしれないが、)相続による所有権移転登記を経由してきました。(11人全員につき相続または家督相続が発生しており、それぞれの名義人について複数回の相続による所有権移転登記が経由されていました)

 

現在は、その社団は市の認可を受け、正式に法人格を取得しています。(法人格取得は平成になってから)そして、この度、この土地をその(法人格を取得した)社団名義に変更したいというのが目的です。

 

ここで、本来なされるべき登記手続きを考えると、当初の社団構成員であった11名については例え死亡したとしても相続財産ではないのだから相続による所有権移転登記はなされるべきではなかったはずです。しかし現実はその相続による所有権移転登記がなされてしまったわけですから、これらの所有権移転登記は抹消されるべきものです。

そうすると、何世代も前の名義人に完全に戻すまでの所有権抹消登記を行い、その後の構成員変動などによる権利移転登記を経て、やっと当該社団に移転登記ができることになるわけです。これには、相当の人数が関与することになるうえに、戸籍等の収集も困難を極めます。

協力してくれない人が一人でもいたら暗礁にのりあげます。

 

そこで、なにかと敬遠されがち(?)な「真正な登記名義の回復」で申請し、無事に「無効な所有権移転登記の抹消に代えて」受理していただきました。

 

ケースバイケースではあるでしょうが、登記原因証明情報の一部を掲載しておきます。

なんかちょっと主張すべきことがずれている気がしないわけでもないです。

同業者の方は、大きな心で見てやってください。

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2 登記の原因となる事実又は法律行為

(1)本件土地の所有関係

本件土地は、明治時代より、本件土地を含む一帯区域に住所を有する者らの地縁に基づいて形成された団体(いわゆる自治会)が所有していたものであるが、当該団体が権利能力のない社団であったため、当該団体の構成員全員の名義をもって所有権の登記を経由していた。(ただし、上記団体は平成〇年〇月〇日、□□市の認可を受け、〇〇自治会という名称の認可地縁団体となった。)

(2)無効な所有権移転登記手続きの経由及びその是正方法

本件土地は上記のとおり、実体上、〇〇自治会に属しており、当初の団体の構成員であった登記名義人らの財産ではない。したがって、各登記名義人が死亡した場合には、委任の終了を登記原因として、他の構成員またはあらたに構成員となるべきもの、若しくは上記平成〇年〇月〇日以降においては〇〇自治会に対して所有権移転登記をすべきであったところ、誤って、全登記名義人について相続または家督相続等を登記原因とする所有権移転登記が経由されてしまったため、実体と合致しない無効な登記記録となっている。

上記の経緯から、本来であれば、これまでになされた相続及び家督相続を原因とする所有権移転登記は、これらをすべて抹消したうえで、あらためて委任の終了を登記原因とする所有権移転登記をするべきである。

しかしながら、この方法によると、当初の登記名義人であった団体の各構成員らのすべての法定相続人が登記手続きに関与する必要があるため、膨大な量の戸籍謄本等の収集を伴う相続人らの存否調査のうえ、すでに遺産分割協議が成立して相続関係から離脱した相続人らも含めた「全相続人」に登記手続きの協力を要請しなければならない。

なんら争いのない権利関係を公示するだけの目的に対して、現登記名義人らの負担はあまりに大きく、著しく経済的合理性を欠く。

(3)よって、現登記名義人たる登記義務者(登記義務者が死亡している場合にあってはその法定相続人)は、登記権利者たる〇〇自治会に対し、本件不動産の共有持分全部を、真正な登記名義の回復を原因として移転する。

 

2024.11.21 Thursday