解説・豆知識
ビル名の変更による会社の本店変更登記
会社の本店所在地(住所)として会社が入っているビルの名前を登記している場合があります。
たとえば、〇〇株式会社の本店は、「神戸市中央区~~町1番1号 ABCビル5階」というような場合です。
ここで、ABCビルのオーナーがビルの名称を変更し、XYZビルとなった場合、〇〇株式会社の本店住所の登記は、現に存在しない「ABCビル」のままですから登記を変更するのが適切ですよね。
ただ、〇〇株式会社の関与しないところで、その住所の一部であるビル名が変わってしまうわけですから、一般的な本店移転登記のように取締役会の決議などが必要になるかどうかという問題があります。
<私の見解>
ビル名の変更に伴い、会社の本店の表記を変更するか否かは、専ら会社の意思にかかわることであるから、本店表記の変更は
① 取締役会による変更決議を要し、
② 原因年月日は、当該決議日をもって「変更」(「移転」ではないため)
とすべき。
以下、場合分けして解説します。
【パターン1】
・変更後の本店に、新ビル名を含めたい場合
<実際の登記官からの解答>
・取締役会の決議は不要
・ビルの名称が現実に変更になった日を特定する必要あり
<登記申請書の概要抜粋>
・登記の事由 ビル所有者によるビル名変更に基づく本店の表示変更
・登記すべき事項
「本店」~~~~1番3号〇〇ビル5階
「原因年月日」平成 年 月 日変更
・添付書類 委任状1通
・登録免許税 金3万円
<委任状の記載事項>
平成 年 月 日、当社が入居しているビルの所有者が、そのビル名を「△△ビル」から「〇〇ビル」に変更したことによる、本店の表示変更登記
【パターン2】
変更後の本店に、新ビル名を含めたくない場合(今後もビル名の変更がある都度登記手続きを要し、煩雑となることを懸念)
<実際の登記官からの解答>
・取締役会の決議を要する
・決議の日をもって変更
<登記申請書の概要抜粋>
・登記の事由 本店の表示変更
・登記すべき事項
「本店」~~~~1番3号5階
「原因年月日」令和 年 月 日変更
・添付書類 委任状1通、取締役会議事録1通
・登録免許税 金3万円
<委任状の記載事項>
本店の表示変更登記
<問題点>
パターン1の場合は、ビルのオーナーがいつビル名を変更したのか明らかでない場合はどうするかですね。
以上、パターン1とパターン2で逆の結論となり、現在も統一的な取り扱いがなされているか分かりません。
同様の案件がありましたら、その都度、申請先の法務局に確認が必要かと思います。
(以上令和6年5月編集)